ここでは歯周病の基本治療をご紹介しましょう。まずはブラッシングです。
歯周病は発見さえ早ければ、完全に治ります。歯を削ることも、ましてや1本も抜かずに、歯ブラシ1本で治せることもあります。人によっては、病状がかなり進んでいても、歯磨きを励行することで治る場合さえあります。 歯肉炎の場合で2~3週間、軽い歯周病の場合でも2~3ヶ月歯磨きを励行すれば治りますが、これは歯石を取りのぞくことが前提となります。
歯石は歯磨きでは取れないからです。逆に、歯石を取ったからといって歯磨きを怠れば、その日からまた歯垢がつくられ始めて何にもなりません。仮に手術をしたとしても、手術後に歯を磨かなければ炎症は再発します。よって毎日あるいは毎食後の歯磨きが、自分の口の中の治療になっているという自覚をもつことがとても大切です。
次にスケーリングとルートプレーニングです。歯の面、すなわち肉眼で見える歯石とポケットの中の見えない歯石を取ることをスケーリングまたは歯石除去といいます。そして、歯石を取ったあとのざらざらした歯の面を平らにすることをルートプレーニングといいます。スケーリングとルートプレーニングは、軽度の歯肉炎の場合、一回1時間として二回、重度の歯肉炎では四回ほどかかります。
軽度の歯周病の場合は、約2ヶ月間、重度になると3ヶ月から6ヶ月を用います。歯石を取ると、しみることがあります。また、歯石を取ったために、歯がグラグラと動きだす場合があります。歯が少し動き出しても、歯肉の炎症が改善されるにつれ、徐々にもどるので心配はいりません。 そしてスケーリング、ルートプレーニング終了後に1ヶ月ぐらい様子をみて、歯肉の状態を再び診査する再評価を行います。再評価では歯科医は、歯のまわりの組織がどの程度改善されたか、歯磨きをどう正しくしているかを確認します。
その際にはブラッシング指導も行います。ブラッシング指導を行うことで正しい歯磨きができているかどうかを医師が確認することができます。間違った方法で歯磨きをし続けてしまうと、口内環境にも影響を及ぼしてしまいます。歯周病を引きおっ越さない、虫歯にならないためにも正しい方法での歯磨きが重要になってくるのです。
この様な徹底したブラッシング指導は、冠をかぶせたり、入れ歯を作る際にも重要になってきます。また、治療終了後、患者自身が勝ちとった健康な口腔内を維持するためにも重要な役割を果たすこととなります。以上が基本治療となりますが、これらと並行して不良補綴物の除去と部分的矯正の処置が行われることもあります。歯に対して金属冠が大きめにかぶせられていると、歯と金属冠の間に食物のかすがいつも入り込んだ状態になります。
このような不良補綴物の周囲は、歯ブラシによる清掃も困難であり、細菌にとっては格好の住み家となります。このため、この部分の歯肉はいつも赤く腫れた状態になり、ブラッシングをすると出血しています。不良補綴物をはずして、口腔内の環境を整備することは、初期治療の処置としてたいへん重要になってきます。
また、歯が重なり合っていたり、傾いていたりすると、歯垢や歯石がたまりやすくなります。そして細菌が繁殖しやすくなり、歯周病が悪化する原因となります。他にも、歯周病によって歯が本来あるべき位置を動いてしまっている場合もあります。この様な歯に対しては、部分的な橋正が行うこともあります。